2017/3/21

「思いやり行動」が育つ援助

自分の気持ちに折り合いをつけられる

「思いやり行動」とは、相手がどう感じているかを推し量り、自分の気持ちとの折り合いがつけられることです。
最近の研究では、子どもの遊びや生活の中で「楽しい、おもしろい」ばかりではなく、さまざまな感情体験ができることの大切さが注目されています。けんかやもめごとを避けるのではなく、相手の気持ちに気づくように援助・指導できる大人の存在が、子どもの心をしなやかに育てていくというのです。そうした関わり合いとして、ある年長クラスの「回転寿司屋さんごっこ」を通じて見えてきた姿を紹介します。

遊びの中で相手の気持ちに気づく

2、3日前から廃材や色画用紙、折り紙、綿などでいろいろ工夫して作られた、たくさんのお寿司。お皿も回転テーブルも用意し、回転寿司屋さんの準備ができました。ところがいよいよ開店となった途端に、お店の中心になるのは誰かということで「僕が、私が」ともめだしたのです。
「どうしたの?」と保育者が寄り添って「せっかく準備できたのに……」と一言声をかけたところ、子どもたちが集まって相談を始めました。そこで、何となく役割分担ができたようです。「お客さんを呼んでくる人、レジでお金をもらう人、お皿を並べる人……」と次々に仕事の内容がはっきりしてきました。しかし中央にいて、寿司がのったお皿を回転テーブルに並べる人は譲れなかったのです。

ごっこ遊びを楽しむ子どもたち
ごっこ遊びを楽しむ子どもたち

保育者が「みんなで、お客さんが来てくれる回転寿司屋さんを始めたいんだよねー。そのためにはどうしたらいいのかなぁ?」と続けました。少し静まったときに、A君が「僕、お客さん呼んでくる人をやってあげる」。そこから「やっぱりときどき交代した方がいいね」と、少しずつ分担に気づく子どもが出始め、多少ガタガタしながらもお店のオープンにこぎつけました。
年少さんたちが次々とお客さんとしてやってきました。子どもたちも嬉しくて盛り上がっていたころ、最初から回転テーブルの中央を受け持って譲らなかったB君が「I子ちゃん、交代するよ」と声をかけたのです。I子ちゃんは、最後までB君と「僕だ、私だ」と競り合った子。B君も、I子ちゃんのことが気になっていたのでしょう。これこそ「相手の気持ちへの気づき」です。この回転寿司屋さんごっこはたくさんのクラスの子どもたちを巻き込んで、メニューも増え、一週間ほど大盛況でした。

子ども同士で気持ちが通じるように橋渡し

子どもの輪に入って援助する
子どもの輪に入って援助する

いろいろなクラスでごっこ遊びが展開される中で、こうした「交代するよ」「手伝ってあげる」「順番にやろう」「貸してあげる」といった言葉がとびかうようになりました。大人は直接的にこうした言葉を押しつけがちです。回転寿司屋さんごっこを通じて、大人の援助のあり方を改めて学んだ気がしました。子どもの遊びに無駄はないようです。しかし、ほったらかし状態では気持ちを発散する遊びになりやすいのも子どもです。ご家庭ではご両親、幼稚園では保育者が、自分ではうまく伝えられない子どもの気持ちを受けとめ、子ども同士で気持ちが通じていくように橋渡ししたいものです。

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