2017/7/18
子どもと“不思議”
自然へのつぶやきに感じる感性の育ち
お花が散って 実が熟れて、
その実が落ちて 葉が落ちて、
それから芽が出て 花が咲く。
そうして何べんまわったら、
この木は御用がすむかしら。
『金子みすゞ童謡集』より「木」(角川春樹事務所)
樹木はつくづく不思議だと思います。何百年の老木になっても、一年に一度は必ず新芽を吹いて新しい木となり、花を咲かす。人間にとってはまさに驚きです。
園庭に生える大木4本の「御用」
竹の子幼稚園の園庭には、4本の大木があります。これらは区画整理工事にともなって全て切るという案になっていました。しかし開園以来、暑い日はもちろん冬の寒風からも子どもたちの遊び場を守ってきてくれた木々です。何とか残せないかと専門家の力をお借りして考え、移植することになりました。そこで夏に木の周りを深く掘って根回しを。そして木に負担がかからないように枝はしっかり刈り込みました。すると大勢のなかの、この状況に気付いた子どもたちから、こんなつぶやきが聞かれました。
「暑いねー。汗がいっぱいだから、よっぽど暑いよ……」
「涼しいハッパがないからねー」
「あったあった。前はハッパがいっぱいあったよね……」(みんなで上を見上げて)
「あっちは涼しいよ」(柿の木の方を指して)
「ハッパいっぱいだぁ……」(ちょっとおどけて)
子どもたちのつぶやきの素晴らしい感性に驚き、嬉しさがこみあげてきました。この感性は大木に育てられたのでしょうか。
- 園児を見守り続けた大木たち
子どものつぶやきに耳を傾けて
- いろいろな不思議に心を向ける
自然のなかで幼児期の子どもたちと接していると、さまざまな驚きのことばに出会います。
「太陽はどうして出たり入ったりするの」(急に曇ってきて)
「雨はどうして降るの」(雨が降ってきたからおだんごを作れなくなって)
「白い雲はどこに隠れているの」(まっさおな空を見て)
こうしたことばは、子どもが無意識に自然に対してある驚きを感じたとき、思わず口から出たように思います。「不思議だなぁ」と新鮮に思う感動は自然へのやさしさを育み、科学する母胎となるのでしょう。
子どものつぶやきにそっと耳を傾けてみましょう。心和み、子どもがいとおしく感じられ、ゆっくりと育つことへの深い愛情も湧いてくるのではないでしょうか。