2011/11/15
園生活のルールを子どもたちのものに
子どもが自分で乗り越えられる体験につなげる
「子どもが『ドッヂボールのときにルールを守らないお友だちがいて、楽しくない』と話していました。子どもに任せてばかりではなく、最初にしっかりルールを指導した方が、ケンカやもめ事も起きずにゲームを楽しめるのではないでしょうか」
ほぼ毎年、お母さんからこんな質問をいただくことがあります。
ルールは本来、自分たちが快適な生活を営むために作り出されていくものです。集団生活の場である以上、小さい子どもであっても共通のルールが必要なことは言うまでもありません。
- 自然とルールができていく
しかし、幼児期に大切なのはルールを守らせることではなく、子どもたちが自らルールの必要性に気づき、快適な園生活を営もうとすることにあります。
遊びの中のルールは、原則として遊びをおもしろくするために作られています。子どもは自由な遊びの中で、ゴチャゴチャしながらも自然にゲームを楽しむためのルールを理解していきます。はじめはその場限りの取り決めだったものが、同じ遊びを繰り返していくうちに消えたり定着したりして、共通のルールによって展開されるようになっていくのです。
自分で考え、自分で行動する『生きる力』
もちろん、なかなかルールが理解できない子どもがいたり、理解していても守らない子どもがいたりして、うまくいかないこともあります。このゴチャゴチャをマイナスと受け止め、レールの上を走らせようとすることが、冒頭の「最初にしっかりルールを指導した方が……」ということになるのではないでしょうか。
一見、このように指導することが教育のように思えますが、これは『援助のしすぎ』になると考えています。幼児期にしっかり育てておくべきことは、子どもが自分で考え、行動しようとする意欲です。
- 自分で考え、自分で行動する『生きる力』
何も問題の起きない中で過ごしていると、問題がおきたときに自分では手が出せなくなり、人のせいにしたり、逃避したりして、自分で何とかしよう、どうしたら良いか誰かに聞いてみようといった、自分の考える力が育っていきにくくなってしまいます。幼児期にケンカやもめ事をしっかり体験し、自分の力で乗り越えられることこそが『生きる力』だと思います。
子どものためになる援助ってなんだろう?
子どもが「○○君ってルールを守らないんだよ」と話してきたら、その気持ちをしっかりと受け止めて「○○君がルールを守らないんだね」とオウム返しをしてみましょう。どんなことも先回りしすぎず、根気よく子どもの言動につきあってあげてください。本来の援助とは、子どもの代わりにお母さんが行動したり指導したりすることではなく『子どもが自分で乗り越えられる体験につなげること』だと思います。