2016/1/19

「一人ひとりを大切にすること」とは

幼稚園生活を共にしてこそ育つ心

時代の大きな変化の中で、家庭や幼稚園に精神的なゆとりがなくなったと危ぶまれています。自己中心的な大人によって自己中心的な子どもに育つといった声もあります。私たち大人は、どの子も豊かに育っていくための努力を惜しんではならないでしょう。
竹の子幼稚園では、障がいのある子どももない子どもも、一緒に生活する統合保育を行っています。その中で、私たち保育者が心がけることは「一人ひとりを大切にすること」です。この心は、一人ひとりの違いに優劣をつけずに、まず全てを受け入れていくことから始まります。保育者には、子どもが今なにを感じているのか、どのような経験が必要なのか、捉え続けていくことが常に求められます。

人を好きになり、人に関心を持つ

集団の中で育っていく
集団の中で育っていく

子どもは心身の成長、発達に伴って、自然に自分から仲間を求めてかかわりを持つようになっていきます。しかし障がいのある子どもは、周りの子どもたちや家族以外の大人との関係が作りにくかったり、集団が大きな抵抗となって強い緊張に結びついてしまったりすることがあります。
子どものありのままが周りの人々になかなか理解されにくく、ご家族の苦しみにつながっていくことも少なくないでしょう。そのため、個から集団への発達プロセスをたどることに援助が必要です。
子どもたちが人間らしく育ち生きていくためには、人を好きになり、人に関心を持てるようになることが大切なのです。

そのときそのときの気持ちに寄り添う

障がいのある子どもへの接し方において、思いやりや優しさのみを強調し、それを押しつけがちな大人がいます。こうした感性は、言葉で教えて育つものではありません。生活を共にする体験の積み重ねから、感じ取っていくものだと思います。また、統合保育が障がいのある子どものためだけにあると誤解している大人も大勢いるように思います。そうではなく、子どもたちが一緒になって、どのように園生活を過ごしていくことができるのか。そのためにはどんな努力をすべきなのか。竹の子幼稚園は、こういったことを体験的に学んでいく場でもあります。
 

力いっぱい走る子どもたち
力いっぱい走る子どもたち

例えば、毎年行う運動会では、当日を迎えるまでにいろいろなドラマがあります。特に年長児はリレーでたくさんの葛藤を体験します。「僕は一生懸命走っているのに◯◯のせいで勝てん」と怒ったり「一番になれないから◯◯チームに変わりたい」と言ってみたり、自分の思いを分かってもらえないと座り込んでしまったり。どれもこれも、そのときどきの率直な感情の表れであり、成長のチャンスです。私たちもその気持ちに寄り添いながら「こうあってほしい」という願いを伝えました。
運動会当日、私は感動で心が震えました。走り抜けていく子どもたちの真剣な姿に、育っていく力の輝きを感じたのです。そして「この園庭の全ての大人のみなさんが、子どもたちから学んでいただけたら嬉しいな」と思いました。

大人が子どもたちの手本になる

幼児期の生活の中で、人間はいろいろであってよいと体験することはとても大切です。子どもの集団では、優しさと攻撃性、協調と競争、同情と批判、思いやりと自己中心性といったものが入り混じっています。それらが関連し合って、子どもたちのさまざまな言動となって現れてきます。障がいのある子どもとない子どもが一緒に生活できる場があれば、自然に育ち合いが始まるわけではありません。その出発は、決して始めから優しさあふれるものでもないのです。
一人ひとりの違いをプラスに動かして、子ども同士のかかわりの質を高めるには、私たち大人の行いが手本となります。障がいのある子どもを受け入れ援助する大人の仕草が、子どもの言動に大きな影響を及ぼすのです。そのことをいつも自覚していたいものです。そして全ての教職員と保護者のみなさんが、さまざまな価値感を見直し、信頼関係を作りあげていくことが求められます。そうした努力の中でこそ「優しさ」や「思いやり」を持った子どもたちが育っていくのではないでしょうか。

子どもの集団を温かく見守り支えていく
子どもの集団を温かく見守り支えていく

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