2018/3/20

文字との出会いで広がる子どもの世界

情報があふれる時代に大切な援助

絵本や物語に触れるといった日々の生活を通して、子どもたちはそれぞれのタイミングで「文字」の世界への扉を開いていきます。今はたくさんの情報があふれる中で育っているので、びっくりするほど物知りです。その傾向はどんどん進んでいるように感じています。

書きたい気持ちが育まれる

年長になると、園生活のさまざまな場面で文字に接する活動があります。たとえばお母さんへのプレゼント作りの場面では、子どもたちは早く書きたくて保育者の説明に集中しています。紙が配られるとすぐに「『は』ってどうやって書くの」「知ってるよ」「『あ』はむつかしいね」「私の名前の『あ』だよ」……。いよいよ困ると「せんせい」と声がかかります。お母さんへのメッセージを書きあげようと、熱心に取り組みます。
クラスの環境づくりとして五十音の表を貼ったり、個々の名前カードを作ったりもします。個人差は大きいですが、こうした活動があるたびに「文字を読む」「書く」ことへの関心度は「興味がある」から「書きたい」「書けるようになりたい」へと着実に発展していきます。

自然にふれあう文字のカタチ
自然にふれあう文字のカタチ

思いや感情を人に伝える手だて

年長さんは、絵を描くと自分で記名します。そこから自分の名前はいくつの文字でできている、○○くんと同じ文字がある、といった気付きも増えてきます。三学期に入ると、名前カードを持ち寄って言葉づくり遊びを楽しみます。お手紙ごっこもブームになり、幼稚園特製のハガキや切手、ポストも園内のあちこちに置かれます。ご家庭の年賀状のやりとりが幼稚園で展開されます。こうして興味・関心のある「文字」から、思いや感情を人に伝える手だてとしての「文字」へと子どもの世界が広がっていくのです。年少さんや年中さんも、年長さんのこうした成長の姿に憧れをもち、刺激を受けていきます。

文字への興味・関心の芽を育む
文字への興味・関心の芽を育む

ただし「文字」の世界への扉を開くタイミングは子どもそれぞれで、個人差があるものです。ある絵本作家さんは「文字は絵や読み手の邪魔をする。幼児にはそれぞれ想像たくましく自分の世界を広げてほしい、絵本は、自分で読むものではなく読んでもらうもの……」といったお話をされています。周りの大人が、子どもに文字を使わせようと慌てることはありません。一人ひとりの文字への興味や関心の芽をじっくりと育むことこそ、情報があふれる時代を生きる子どもたちへの援助のように思います。

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