2018/7/17
幼稚園の生活
それぞれの年代の育ちと保育者の役割
竹の子幼稚園では、年少3歳・年中4歳・年長5歳の子どもたちが集団で生活し、学び合っています。ですが幼稚園で過ごすと、どんどん成長が見えてくるというわけではありません。それぞれが成長につながる体験を積んでいるのです。
楽しいイメージを膨らませていく
- 手をつないで感じるぬくもり
年少3歳は、自分の今できる・したい遊びに没頭して、自分を育てていく時代です。1学期の終わりごろになると他の子どものしていることが気になり、自分から次の遊びへと向かっていきます。保育者はこうしたタイミングを逃さないよう、子どもがどんなことに興味をもっているかを見抜きます。そして、適切な援助や活動計画を準備していくのです。幼稚園が楽しい・この遊びは面白い・もっともっとやってみたい……。子どもたちが楽しいイメージを大切に膨らませていく、丁寧な保育を展開していきます。
集団の中で一人ひとりの育ちを意識
- 葛藤も楽しさも味わえる遊び仲間
年中4歳は、4~5人の遊び仲間ができてきます。仲良く遊べる時間よりも、子ども同士の関係性の中で葛藤が起こる時代です。例えば自分の思いがそのまま通らないとか、自分の言いたいことや、やってみたいことがうまく発揮できないなどが起こります。「年少は楽しく幼稚園に行けたのに、年中になったらぐずぐず言って……」といったことも、多くの子どもたちが体験します。
この葛藤体験が、人としての大切な心を育てていきます。保育者は遊びや活動の中にそれを取り入れて、友だちと協力し合って楽しめる場を提供しています。同時に一人ひとりの子どもが「よかった! うまくいった!」「これがやりたかった、やっとやれてうれしい」などと自信をもてるようなチャンスを作れるよう配慮もします。クラス全体という集団の中に、一人ひとりという個の育ちをいつも意識していきます。
子どもがやる気になれるような援助
年長5歳になると、クラス全体での協同的な活動もできるようになります。周りの状況を判断したりしながら、仲間を求めていく時代です。園生活では、一番年齢が高いクラスの一員という嬉しさもあります。年少さんの給食のお手伝いやお散歩、遠足のエスコートは、年長さんとして憧れの役割のひとつです。これらは年少3歳・年中4歳のときの育ちがあるからこそできるものです。子どもたちは目的を意識して、自分ならどうしよう、こうしたいといった自己目標を持って園生活や活動に参加します。ルールを守り合い、競い合う姿がいろいろな生活の場で発揮され始めます。
- クラスの仲間とお掃除中
保育者は、子どもたちとの関わり方を間違えないように気をつけます。例えばケンカをしているときは、まず子どもたちの思いをそれぞれ出せる雰囲気で接します。原因が見えてきたら、少し保育者が仲介したりします。
ブロックで乗り物を作っている子どもが、他の子どもが使っているパーツをどうしても使いたくて取り合いになっていたときのことです。保育者は、使っている子どもに「このパーツでしかこの乗り物は完成させられないんだって、○君は違うものでも作れるかなー」と声をかけてみました。大人の常識で「交代で使いなさい」などと注意するのではありません。状況を見抜いて子ども同士が折り合いをつけたり、相手の思いに気付いたりできるように援助してこそ、ケンカが学びとなっていくのです。
私たち保育者も失敗してしまうこともあります。ある日子どもたちが、大型の積み木を使って遊んでいたときのことです。みんなで口々に自分のイメージを出しながら、積んだり並べたり支えたりと工夫していました。そこにやってきた保育者が「すごい! ロケットみたいだね」と言ったところ、みんな黙ってしまい、遊びも自然に終わってしまいました。自分なりのイメージを出し合い、そのやりとりを楽しんでいることを見抜けずにズバリと答を言ったこと。それによって、せっかく広がり始めていた子どもたちの協同的な遊びが中断してしまったのです。
- 気づいたことを話し合って保育に活かす
幼稚園というところは、子どもたちがさまざまな体験を積んで、非認知能力を開花させていくところです。一人ひとりが、どんなことに関心があるのか? 意欲や可能性、持ち味や課題、そして子ども同士の関係性などを見抜く力なくして、子どもの協力的な活動への援助はできないと感じています。ただ計画通りに進めていくのではなく、子どもの心が動き、やる気になれるような援助こそ、保育者の最も大切な役割です。私たちはあくまでも、子どもの育つ力に寄り添いたいと思います。